こんにちは、TSKaigi Kansai プログラムチームです。
現在 TSKaigi Kansai 2024 ではトーク登壇のプロポーザルを募集中です。この記事では改めて登壇のお誘いと、登壇に挑戦される方への応援として、トークテーマの探し方やプロポーザルの書き方のヒントをご紹介します。「登壇に応募はしたいがテーマに自信がない」「良いプロポーザルの書き方がわからない」という方にも、この記事が少しでも応募の助けとなりましたら幸いです。
TSKaigi Kansai 2024 とは
TSKaigi Kansai 2024 は、今年5月に東京で開催された TSKaigi 2024 から派生して、関西で開催する初の地域型サブイベントです。TSKaigi 2024 のフォーマットを踏襲しつつ、学び・情報交換・交流の場を提供し、関西地域の TypeScript コミュニティを盛り上げることを目指しています。関西周辺に在住の方、特に普段東京など遠方のイベントには参加しづらいという方も、この機会にぜひご参加ください!開催日程は2024年11月16日 (土)、会場は京都市勧業館「みやこめっせ」です。
冒頭のとおり、TSKaigi Kansai 2024 ではトーク登壇者を募集中です。せっかく参加するなら、登壇にも挑戦してみませんか?トークはセッション (30分) とLT (5分) の二種類で、TypeScript に関する話題を幅広く受け付けています。
トークテーマの探し方
登壇してみませんかとは言われても、トークテーマが思いつかない・自信がない、という方もおられるのではないでしょうか。そこでまずはテーマの探し方のヒントからご紹介します。
自身の経験や疑問・発見をテーマにする
最も一般的なテーマの見つけ方としては、日々の開発で得られた経験、感じた素朴な疑問、新たな発見など、身近なところにある話題をふくらませるというものがあります。
普段の開発をふりかえってみると、こういったことはなかったでしょうか?
- ある技術を使ったことで上手く開発を進められた、または逆に苦労した
- わからなかったことがわかるようになった
- 面白い、これまで知らなかった技術や技法を見つけた
こういった身近にあるテーマについて、そこに至った背景の情報や、整理されたまとめが付け加われば、それだけで立派なトークになり得ます。
テーマの新しさや情報の多さについては、心配しすぎることはありません。あなたが疑問に思ったことは他の人も疑問に思っているかもしれませんし、あなたが発見したことは他の人が探し求めているものかもしれません。また題材自体がありふれたものであっても、背景や視点が他の人にとっては興味深いものであることもあります。ぜひあなたが開発している中で得られたことを共有してみてください!
興味のある分野を深掘りする
こちらも一般的なテーマの種類として、自身の興味のある分野について調査や研究を行い、その結果をまとめて発表するというものがあります。
もし TypeScript に関連して特に関心のある技術や分野があったり、まだ解決していない疑問を持っていれば、この機会に深掘りしてみて、得られた知見をトークとして発表してみるのはどうでしょうか?いわゆる「発表駆動開発」をしてみるのも良いかもしれません。
プロポーザルの書き方
トークに応募されるみなさまには、プロポーザルという形でトークの概要をまとめていただきます。
プロポーザルは、トークの採択を決める選考において、選考者が参照できる唯一の情報です。またトークが採択された際にはプログラムに掲載され、他の参加者にトークの内容を伝えるための情報ともなります。プロポーザルには決まった書き方というものはありませんが、ここではトークの内容や意義、魅力をより上手く選考者や他の参加者に伝えるために、いくつか押さえておきたいポイントをご紹介します。
トークの内容をわかりやすく伝える
あらためて、プロポーザルは選考者や他の参加者がトークの内容を知るための唯一の情報です。したがって望ましいプロポーザルとは、選考者や参加者に知りたい情報がわかりやすく伝わるようなものであると言えます。では選考者や参加者が知りたい情報とは何で、どうしたらわかりやすく伝わるのでしょうか?
まずは選考者や参加者が知りたい情報とは何かを考えてみましょう。これはもう少し噛み砕くと、選考者にとってはトークの採択を決めるため、参加者にとってはトークの聴講を決めるための材料となる情報と言えます。そういった情報はいくつも種類がありますが、その中でも特に、
- トークで主に扱う題材。何についてのトークなのか?参加者はトークを聴講するとどういったものを得られるのか?
- トークの背景。どんな人のトークか?どういった視点や経験に基づいてトークが行われるのか?
- 想定聴衆。どれくらいの難易度のトークなのか?参加者はトークの内容を十分に理解できるのか?
の三つは、選考者・参加者どちらの立場からも一般に期待されることでしょう。プロポーザルを書いたり、書いた内容をチェックする際には、こういった情報が読み取れるようになっているかを確認してみましょう。
次に上記のような情報をわかりやすく伝えるための書き方を考えましょう。一般論としては「構造化された、論理が明確な文章を書く」ということになりますが、最初に取り入れやすいテクニックとしては、まずは伝えたい項目について見出しを作り、それぞれの項目ごとに説明をしていくというのが、読み手にも、書き手自身にとっても、何を伝えようとしているのかが明確になって良いでしょう。
一例として、以下は上に挙げた三つの項目について、それぞれに見出しを作る形で書いたプロポーザルのサンプルです。
# トークの主題 このトークでは xxx というライブラリについて扱います。 xxx は yyy という課題を解決するために作られたライブラリで、zzz といった機能を備えています。 トークでは xxx の紹介に加えて、特に便利な使い方や、実際に利用する中で見つけたベストプラクティスなどをご紹介します。 # トークの背景 私はプロダクト開発において2年ほど xxx を利用してきましたが、公式のドキュメントを読むだけではわからなかった使い方やプラクティスがいくつもありました。 そういったドキュメントにはあまり書かれていないような内容についても、実際に利用したり挙動を調査した経験を踏まえて紹介できたらと思います。 # 想定聴衆 これから xxx を使おうとしている方、もしくは yyy という課題に取り組んでいる方。 xxx についてはトーク内でも詳しく紹介するため、前提知識は必要ありません。 型に関する難しい話も登場しないので、TypeScript 初級者でも理解できるような内容になる予定です。
もちろん、ここで紹介した書き方はあくまで一例です。TSKaigi 2024 のタイムテーブルには実際のトークのプロポーザルが合わせて掲載されていますので、それらの書き方を参考にしてみるのも良いでしょう。
フィードバックを取り入れる
プロポーザルが書けたら、それが実際にトークの内容をわかりやすく伝えられているか、改めて確認してみましょう。
まずは自分自信が選考者または参加者の視点に立って、知りたい情報が読み取れるかレビューしてみると良いでしょう。その中で伝わりづらい、読み取れないといった箇所があれば、そのフィードバックを取り入れてプロポーザルをより良くできるはずです。
自分自身のレビューだけでは客観的な視点でのフィードバックに自信がなければ、身近な人にレビューをお願いするのも良いでしょう。もしくは AI の力を借りるのも一つの手です。
TSKaigi 2024 登壇者の方にも聞いてみました
トークテーマの探し方とプロポーザルの書き方について、TSKaigi 2024 登壇者の方にご協力いただき、普段どのようにプロポーザルを書いている・書いていたかを教えていただきました!快くご協力いただいたお二方にはこの場を借りて感謝を申し上げます。
kosui さん (TSKaigi 2024 セッション登壇者)
- X (Twitter): @kosui_me
- GitHub: iwasa-kosui
- TSKaigi 2024 でのトーク: 「複雑なビジネスルールに挑む:正確性と効率性を両立するfp-tsのチーム活用術」
Q. トークテーマはどのように探していましたか?
前提として、私は個人的な趣味や関心よりも、自分が実際に業務で直面した課題とその解決策を共有することを重視しています。そのため、過去の社内ドキュメントや Slack や GitHub のレビューを見返しながら、自チームがどのような課題に直面し、どのように意思決定をし、その結果として良かったことや失敗したことを振り返ります。スプリント毎のレトロスペクティブの記録を残しているチームであれば、それを見返してみるのも良さそうです。
その中で、「これは知人の〇〇さんに話したら面白がってくれそう」と思うような、具体的な聴講者のペルソナが思い浮かぶものをトークテーマにしています。幅広い人々にコンテンツを届けることも素敵なことではありますが、私は聴講者のたった一人にでも深く刺さり行動を変容できるトークをしたいです。自分では「このトークテーマはあんまり幅広い人に刺さらないかもしれない…」と思っていても、案外思いもよらぬ方から反響を頂くこともあるので、とりあえずプロポーザルを出してみるのが大事だと思います。
Q. プロポーザルを書く際に大切にしていたこと・工夫したことは何ですか?
まず、「背景」「課題」「解決策」「結果」の4つの要素を明確にすることを心がけています。論文やレポートと同様に、これらの要素を明確にすることで、自分自身が何を伝えたいのかを整理しやすくなります。
また、対象とする聴講者のペルソナをなるべく具体的に明記することをおすすめします。これによって、審査をする方が「このプロポーザルはイベントの趣旨に合っているか?」を判断しやすくなります。さらに、自分自身も「このトークはどのような聴講者に価値を提供するのか?」を意識しやすくなり、セルフレビューの品質を向上させることができます。
そして、エレガントな解決策よりも自分が直面した課題を率直に共有することを心がけています。どんな素敵な提案も、読み手に「この泥臭い課題はどうやって解決するんだろう?」と共感と興味を持ってもらわなければ、意義を理解してもらえません。
Q. プロポーザルを書くのにどれくらい時間をかけましたか?
2時間程度かかりました。
まずは背景・課題・解決策・結果を1行ずつ書き出しました。そして、知人を思い浮かべて事の顛末を声に出してみました。音声入力を利用し、Google ドキュメントや VSCode などへ書き起こしました。その後、プロポーザルの構成を整理し、ブログ記事のように読みやすい文章になるように修正を加えました。
Q. 登壇して良かったことは何ですか?
まず、自分自身と同じような課題を抱えている方と交流し、他の方がどのように解決しているかを知ることができることです。また、その課題を解決した先で直面するであろう新たな課題を発見するヒントにもなります。それによって、より中長期的な視点で自分やチームの業務改善に取り組むことができます。
加えて、他社のリアルな課題や悩みを生の声として聞くことで、自分自身のスキルや経験を活かせる場面を見つけることができます。普段はリモートワークで引きこもっているため、私にとって自分の市場価値を見つめ直す機会は重要です。
そして、普段は中々話すことができない方とも交流できることです。他の方の SNS やブログで「こんな課題をこう解決したのか!話を聞いてみたい!」と好奇心を抱いても、なかなか直接話す機会はありませんし、そのような勇気もありません。しかし、登壇することで「私はこんな課題を抱えていて〜」と自分の話を整理して伝えられるため、他の人とのコミュニケーションのハードルを下げることができます。
やじはむさん (TSKaigi 2024 LT登壇者)
Q. トークテーマはどのように探していましたか?
プロポーザルの応募をする上でまずは TypeScript に関係していて自分が話せそうなことを探すことから始めました。漠然と30分はどう足掻いても話せないだろうなと思い、5分で収まり良く話せそうな内容を探しました。当時はパフォーマンスについて強く興味を持っていたので、TypeScript とパフォーマンスにはどういう関係性があるだろうと思い、ネットで検索してみました。すると、TypeScript の公式リポジトリにある Wiki に TypeScript のパフォーマンスに関しての記事がありざっと読んだところ身近で面白そうな内容だったのでこれに決めました。
私自身エンジニア歴も短く TypeScript 自体も触り始めて1年程だったので適切な発表内容にできるかあまり自信がなかったのですが、TypeScript 公式リポジトリに明確に書いてあるので信憑性が高かったというのも、このテーマを選んだ理由の一つです。ただ、公式で提供されている情報をそのまま発表するだけでは面白くないと思うので、「どうしてそれが必要なのか」や「どう改善するのか」のようなより身近に感じられるような内容にしようと決めていました。私のようにあまり TypeScript について詳しくない人でも、ネットで自分が興味のあるテーマとの関連性について調べたりすると意外と話せそうなテーマが見つけられるかもしれません!
Q. プロポーザルを書く際に大切にしていたこと・工夫したことは何ですか?
一番工夫したところは先に発表内容に関してブログで記事を書いてそのリンクと一緒に提出したところです。プロポーザルのフォーマットに発表内容の参考情報としてリンクを添付できるので、採択者の方も話したい内容がどんなものなのか想像がつきやすいようにしました。これがどれくらい効果があったのかはわからないのですが、ないよりは良かったのかなと思います!
あとはどうして自分が登壇したいのか、登壇することで何を実現したいのかというような登壇すること自体に関しても触れました。これは発表を聞いてくださる方というよりは採択者向けのメッセージだったかもしれません。ただ裏話を言うと、最初は TSKaigi の私の登壇者情報のページで採択者向けに書いたメッセージもそのまま書かれており、公開されて恥ずかしくなってしまったのであとで消してもらいました😂
また、他の方のプロポーザルを見ると結構短めにまとめている方も多かったので、テーマが面白かったり何を伝えたいかが明確であればそこまで詳細に書かなくても良いのかなと後で思いました。なのでまずは自分が話せそうなテーマが思い浮かんだらとりあえずプロポーザルを出してみるのがいいのではと思います!
Q. プロポーザルを書くのにどれくらい時間をかけましたか?
あまり覚えてないのですが、ネタ探し・ブログの記事を書く・プロポーザルの作成含めて2、3日くらいだと思います。
Q. 登壇して良かったことは何ですか?
一番は他の登壇者の方と仲良くなれたことが嬉しかったです!普段仕事では若手のエンジニアと関わる機会が少ない方なので、年が近い登壇者の方と一緒にスポンサーブースを巡ったり、懇親会で話したり交流できたのがとっても新鮮で楽しかったです😊 良い刺激にもなりました!
また、エンジニアとしてのキャリア的にも一つの実績としてアピールできると思うので、その点でも登壇して良かったなと思いました。反響もあり、エンジニアの友達が見てくれていたり、同じ会社の方が X でスライドが流れてきて見ました!というようなメッセージをくださったのも嬉しかったです!
まとめ
ということで、トーク応募にあたってのテーマの探し方とプロポーザルの書き方のヒントを紹介しつつ、実際に TSKaigi 2024 で登壇された方々がどのようにプロポーザルを書いていたかも合わせてご紹介させていただきました。この記事がみなさまにとって TSKaigi のトークに応募するきっかけや手助けとなりましたら非常に嬉しいです!
TSKaigi Kansai 2024 のトーク応募はこちらのフォームから受け付けています。応募締め切りは9/17 (火) までです。みなさまの想いの詰まったプロポーザルをお待ちしております!
参考
この記事の作成にあたって参考にさせていただいた記事のリストです。